2014年05月24日

NSCを無視したケネディ3

★兄の代わりに大統領への道を託されたジョン


父親が自分の夢を兄に賭けようとしているのを幸いに、次男のジョンのほうはガールフレンド探しに夢中になりながら、ありきたりの学生生活を送っていた。生まれつき背骨が悪くて病気がちだったこともあったと同時に、兄には絶対にかなわないというコンプレックスも持っていたようだ。成績が悪かったのでハーバード大学に入学するのは無理だったが、父親が裏から手をまわして入学させてしまっている。しかし在学中の成績はいつも落第ぎりぎりだった。

その間、ジョンは父の命令で、ドイツ遊学をしている。当時英国大使だった父ジョセフはヒトラーの政策を密かに支援していたので、遊学の際にもさまざまな便宜が図られたと思われる。

ジョンはその時に取材したミュンヘン会議での体験を卒業論文にすることにした。論文を見た父は友人の新聞記者に頼んで推敲させ、出版社に持ち込み書物にした。この本はヒットして8万部も売れ、万年落第生がベストセラーを出したことに驚いたハーバード大学はジョンに優等の成績を与えて卒業させることとした。

卒業したジョンは海軍に入隊した。ここでも父は、裏から手をまわしている。自分と同じく不正利得で稼いだ金で海軍長官の職を手に入れたジェームズ・フォレスタルに頼んで、ジョンを魚雷艇の艇長にしてもらっている。後述するがこのフォレスタルこそがNSCのメンバーとしてこの機関を戦争マシンに変貌させた張本人なのである。

しかし、この海軍での経験はジョンを生まれ変わらせるきっかけともなったのである。

ソロモン海域を掃海中、ジョンの魚雷艇は突如、日本軍駆逐艦天霧と衝突し、船体がまっぷたつに割れて乗組員十三人が海に投げ出された。

海に投げ出されたジョンの目に映ったのは、海上を機銃掃射しようとする日本兵だった。さらにその傍にいた司令官があたかも「溺れている敵を撃つのは侍ではない」といったようなしぐさでその兵士に停止を求めているのを見た。

この体験こそが、後に第三次世界大戦の危機を回避することになったケネディ自身の考え方の基本となっているのではないか。

「敵も自分も同じ人間なのだ」ということをはっきり認識し、その司令官に友情のようなものを感じると同時に、個々人の思惑を超えて敵と味方として戦わなければならない戦争の無常さを、太平洋の荒波の中ではっきりと悟ったのだった。

ジョンはのちに、日本人学者の力を借りて、このときの司令官が、花見弘平少佐(当時)だったことを突き止め、福島県の生まれ故郷で市長になっていた花見との文通を開始している。やはり自分が思っていた通り、花見は機銃掃射停止の命令を出していた。想像通りだった。その後、大統領になったジョンは花見に対しして大統領就任式への招待状を送っている。ジョンにとってこの体験は、それほど大事なものだったのである。

ジョンも花見も、戦争さえなければ敵として戦う必然性のない若者たちであった。国家主義者たちが煽る憎悪に踊らされた若者たちではなかった。そして任務を履行した後に待ち構えているであろう将来を築きあげる広い自覚を持っていたという共通項が、ふたりの侍魂から読み取れる。

残念なことに花見少佐との再会は果たせなかった。代わりに就任式に出席したのは花見少佐をつきとめた日本人学者だった。

★南海の無人島からの生還

ジョンは日本海軍の艦隊にうずめつくされた上に、サメがうじゃうじゃいる海域を6キロも泳いで、無人島にたどり着いている。しかも負傷した仲間を命綱で引っ張りながらである。米海軍はケネディたち十三人の行方を捜すために、豪州軍と連絡をとった。豪州軍は日本軍に警戒されないために、ポリネシアの漁師たちに捜索を依頼した。

6日後、漁師たちは無人島に漂着していたジョンたちを発見した。お互いに言葉が通じない中で、日本軍に見つからないように救出するのは至難の業だったが、成功し、ジョンたちは餓死寸前で本土に生還することができたのである。

この生還劇は新聞に取り上げられ、ジョン・ケネディは一躍英雄となった。 

ジョンはポリネシアの命の恩人たちも大統領就任式に招待している。しかし、渡米ビザの発給に当たった英国の職員が「お前たちは英語が話せないから駄目」といって拒否したことで、渡米はかなわなかった。

若かりし頃に体験して吸ったドイツの空気と、自らが敵と対峙する戦闘の場で出会った体験の中で、ジョン・ケネディは世界の人々は恩讐を越えてつながっているのだということを実感し続けてきたのである。

さらにアイルランド移民の子孫であるということを卑下してとらえていた父ジョセフの道を歩むことは決してなかった。逆にジョンは、自らの出自を誇るとともに、奴隷として下げずまれ続けてきた黒人との連帯の気持ちも持ち続けていた。

つづく


posted by 菅原 秀 at 22:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 民主主義とは何だろう | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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