2004年11月27日

ビルマかミャンマーか

ビルマで何が起きているのか、なかなか理解できない理由の一つが、多民族国家であるための用語の複雑さである。さらに長年の鎖国政策が終焉すると同時に、現軍事政権の情報統制が強化されたこともその一つである。1988年の学生運動の弾圧や、アウンサンスーチーと国民民主連盟(NLD)の民主主義を求める闘いは断片的に知られているが、ビルマ軍事政権による人権の実態はほとんど伝えられていない。

日本のマスコミはこの国の国名をミャンマーとしているが、海外のマスコミは軍事政権が勝手に変えた国名であるとして依然ビルマのままで表記していることが多い。英語圏のマスコミは「バーマ」、北欧語圏のマスコミは「ビルマ」で通している。また、アウンサンスーチーをはじめ民主化勢力は「バーマ」を採用している。

国連は、「クーデターによる政権変更があっても国家の同一性が認められる限り承認する」という国家承認の原則のもとに、ミャンマーという国名を受け入れたが、国連人権高等弁務官は「バーマ」を採用している。

また、日本のマスコミはビルマ人の名前をアウン・サン・スー・チーなどと表記しているが、ビルマ語は表意語であり、彼女の名前の意味は「勝」「稀」「集」「澄」であり、山田太郎という名前を、ヤマ・ダ・タ・ロウと分かち書きするような不自然さがある。アウンサンスーチー本人も、在日ビルマ人の大部分も日本語での表記には分かち書きをしないことを求めている。

ビルマ人には姓がない。ビルマの少数氏族にも姓をもたない氏族が多い。国連の事務総長だったウー・タント氏の場合、ウーがミスターにあたる敬称であり、タントが名前である。新聞にはよく「ウー氏によれば」などと書かれているが、完全な誤りである。またおしまいの子音が呑み込まれるので、タンのほうが実際の発音に近い。女性の場合の敬称はドーである。また、若い男性への敬称はコーである。さらにカレン語など他の民族の言語にもそれぞれの敬称が使われているが、本書では混乱をさけるためにそれらの敬称を省略して翻訳した。

現在のビルマを支配しているのは国家平和発展評議会(State Peace and Development Council SPDC)という団体であり、1997年11月まで国家法秩序回復評議会(State Law and Order Restoration Council SLORC)と名乗っていた。ビルマの秩序が安定し、民政移管するまでの臨時の組織であるとしているが、現在も権力の頂点から離れようとしない。

またビルマ国軍は、ビルマ語ではタッマドーと呼ばれる。本来はビルマを列強の支配から守る義勇軍の意味だが、仮想敵のいない現在、国軍の拡張の意味が疑間視されている。詳しくは“ビルマ「発展」のなかの人々”田辺寿夫・岩波新書を参照していただきたい。

(c)菅原 秀 加筆2004  初出 

 
posted by 菅原 秀 at 11:57| Comment(0) | TrackBack(0) | アジア基礎知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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